「このチームは勝つときは苦しんで勝つ、そういう宿命なんだな」
あるチーム関係者がこう言った。
岡山県大会決勝につづく、延長の末の勝利。
「苦しかった」(江浦滋泰監督)
二日前に先発を言い渡された西所学弘。
初回三者三振という最高の形でスタートを切った。
高岡商 00
関 西 0
2回、一死1塁で西村貴之。
県大会唯一ホームランを放っている7番バッターはストレートを待っていた。
高めを振りぬくと、打球は右中間スタンドに吸い込まれた。
「オーバーかと思った。ライトが(打球を追うのを)止まったので
入ったんだなと。相当ビックリしました」
一塁ベースをまわったところでガッツポーズを見せた。
その後も関西は着実に追加点をあげた。
特に3点リードでむかえた5回。
高岡商 00000
関 西 0201
この回先頭の3番船引俊秀が左前打で出塁。
つづく松本雅俊の当たりは左翼線へ鋭く転がっていった。
船引は二塁ベースをまわると、三塁コーチャーの松崎晋太郎を見た。
松崎は打球の行方を追いながら、右腕を勢いよくまわした。
「レフトとショートの肩は強くないと思った。
船引は走塁がうまいし、セーフになる自信はありました」
松崎の好判断が関西に4点目をもたらした。
伝え聞いたところ、テレビ中継の解説者も「よくまわした。素晴らしい判断」と言っていたそう。
江浦監督も「あの子は本当にすごい」と感心する。
しかし、“まさか”の展開が訪れる。
試合も終盤に差し掛かった7回だ。
高岡商 000000
関 西 020120
「一気に4点取られるとは思わなかった」(江浦監督)
「後半追い上げてくることは頭に入っていた。
だけど、まさかいっぺんにくるとは思わなかった」(西村)
高岡商は県大会5試合で3試合がコールド勝ち、残り2試合が逆転勝ちと
打率4割中の打撃力と後半の強さを持つチーム。
選手もある程度の反撃を覚悟はしていた。
だが、それが一気に押し寄せてくるとは思わなかった。
安打や死球で一死満塁から1番北田大祐の犠飛で1点を返されると
つづくバッターにも死球で、なおも二死満塁。
3番有沢渉をむかえる。
ここでライトの石口祐次郎は考えた。
「前の打席で(有沢は)ドライブのかかったライトライナーだったんです」
そしてこの場面での当たりも同じような打ち方で飛んできたという。
「だから後ろに下がった。でもバットの先っぽだったみたいで・・・僕のミスです」
打球は力なく、ライトとファーストの間にぽとりと落ちる
走者一掃の三点適時打。差は1点に縮まった。
攻撃は高岡商の先発細川貴生の右打者外角に落ちるスライダーにてこずる。
右の松本、安井一平は口をそろえる。
「曲がるスライダーと曲がらないスライダーがあった」
走者の視点で細川の投球を見た船引も「右は打てないかもしれない」と思った。
(※カーブとの話もあるが、選手たちはスライダーと言っていたのでスライダーで統一します)
「予想以上にいいピッチャーだった」(江浦監督)
関西は7回、そして同点とされた8回にランナーを出すも併殺。
試合は完全に高岡商ペースだ。
高岡商 00000041
関 西 02012000
8回、先頭を許したところからマウンドには
ダース・ローマシュ・匡がのぼっている。
「足は震えていたかもしれない。
でも、マスカットと一緒と思いながら投げた」
そのダースは捕手の平井裕也に「フォームがばらばら」と指摘を受ける。
球速は一度140キロを計測するが、調子は良くなかった。
9回、簡単に二死に抑えると
2番小泉竜生に内野安打を許す。
「あれは取らなくちゃいけない。結果は内野安打でも船引のエラーだ」(江浦監督)
つづく3番有沢の2球目で盗塁を許され二死2塁。
一打逆転のピンチ。
4球目、有沢の打球は、またも石口の前に飛んでいく。
ベンチ上で見ていたコーチ陣は、このとき頭を抱えたという。
しかし、石口の胸中は違った。
「刺せる自信があった」
盛り上がる相手スタンドを左に、バウンドした打球をすくい上げ
力いっぱいホームに送球した。
ベースの前に立った平井は一歩も動かず
石口の返球を受けた。――アウト
「し、しびれた!」という声がスタンドから聞こえてきた。
「夏の県大会決勝も刺してくれた。ライトに打球がいって
2塁ランナーが3塁まわったところで、アウトだと思った」(ダース)
チームメイトも認める守備力。
センバツ後、わけもわからずメンバーから外され、2軍生活がつづいた。
5月の愛知遠征ではボールボーイ、夏の県大会も背番号は16。
グランドに通うOBも「見ていてかわいそうだった」と振り返っている。
石口は課題であるバッティング向上にむけ、とにかくバットを振った。
その努力は夏の県大会初戦、代打で登場し適時打という形で実り
以降スタメンに復帰、定着。甲子園練習二日前に「背番号9」を手にした。
この日も得点には絡まなかったが、4打数2安打。
「練習の成果やなぁと思った」と笑った。
「石口の返球がなかったら、いかれとった(高岡商が勝った)」(江浦監督)
高岡商 0000004100
関 西 020120000
県大会につづく延長戦。
まさかの展開にはなったが、石口の好返球で再び流れは関西に戻った。
円陣を組む選手からは笑顔が見えた。
10回裏。打席にはここまで3安打の船引。
「甘いところ真っ直ぐにきたので思い切り振った」
痛烈な打球がレフト線を転がっていき、レフトがもたつく間に
三塁を陥れ、思わずガッツポーズを見せた。
ここで高岡商は満塁策をとり、松本、安井を歩かせた。
ベンチのなかでは「あれ?これ県大(県大会決勝)と一緒じゃない?」という会話があったという。
船引も松崎と「県大会の同じや」と話していたという。
岡山県大会決勝と走者も全く同じ、バッターも同じく平井。
「また同じパターン。平井においしいところもっていかれる(笑)」(西村)
3球目、白球はスタンドに入る勢いで左中間へ飛んでいった。
平井は打球を目で追うと、左手を高くあげ白い歯を見せた。
「センバツとは観客の雰囲気が違う。何より晴れて嬉しかったですね」(石口)
暴風雨のなかでやりたくてもできなかった自分たちの野球。
サヨナラ負けを喫し、すべてはこの日の雪辱をはらすためにやってきた。
西村は力強く言い切った。「春は逆をいかれた。その借りを返せたと思う」
高岡商 0000004100 =5
関 西 0201200001/=6


また応援いくで〜
好ゲームを期待したいですね。
松本くんは守備で貢献してくれたので、今度はバッティングも
頑張ってほしいですね。